「精神科ってどうして怖いイメージがあるんだろう… 興味はあるんだけどな…でもやっぱり興味があっても怖いって思ってたら精神科で働けないのかな?」
こういった疑問にお答えします。
本記事の内容
こんにちはオッシーと言います。精神科で13年働いてました。
私もそうでしたが、「精神科に興味はあるけど、怖いイメージが強くて踏み切れない」と思ってはいないでしょうか。
本記事に精神科の現場がわかる体験談をたっぷり盛り込みましたので、イメージ通りか、すり合わせてみてください。記事の後半では「怖くても働ける職場」をご紹介します。
注:体験談で紹介してる患者さんの情報は一部事実を変えています🙇
1. 精神科が怖いと感じる理由5つ【看護師への暴力は確実にある】

精神科が怖い理由を5つ考えてみました。
- 暴力のリスク
- 行動が予測できない
- 考えや感情が読めない
- 自分の言葉で傷つけてしまいそう
- 社会的な事件に関わってることがある
それでは一つずつ見ていきましょう。
怖い理由①:暴力のリスク

残念ながら暴力は確実にあります。
精神疾患の影響で感情のコントロールができなくなることがあります。実際に私も患者さんから殴られました。打撲で済みましたが1か月入院しました。
もちろん精神科には包括的暴力防止プログラム(CVPPP)というものがあり、未然に暴力を防ぐことができます。しかしプログラムの存在自体が、精神科に暴力のリスクがある証拠となってます。
怖い理由②:行動が予測できない

暴力と同じく精神症状が影響しています。
例えば、当時受け持ちだった10代の男性患者さんは「悪魔の声が聴こえる」と訴えていました。私も「幻聴が聞こえてるのだろう」というとこまではわかりました。
しかしその日の準夜帯に、共用トイレに置いてあったハンドソープのノズルを取って中身を飲んでしまいました。処置が終わってから理由を聞いたら「飲まないとお前の命を奪うと悪魔に言われたから」と話していました。
この怖さに解消法は後述します。
怖い理由③:考えや感情が読めない

無表情で何も話さない患者さんと出会うと、とまどいますね。
それ以上に難しいのは、話してることと行動が一致しないときです。例えば、毎日規則正しく薬を飲んでいるのに、実は治療を一切信用していなかった患者さんです。
退院してわずか10日後に再入院した患者さんの言葉です。「薬を飲まないと退院できないって知ってたから飲んでただけです。私は病気じゃないのにまただまされてここに来ました」
怖い理由④:自分の言葉で傷つけてしまいそう

とくに入院が決まって生活歴を聴取するときですね。
精神科でも学歴や婚姻歴を聞きます。このときに「学歴を聞いたらバカにしてると思われて怒らせてしまうのでは・・・離婚の経験があったら、余計に心の傷を深めてしまうのではないか・・・」と心配になります。
余談ですが、こういうときは「治療のために必要なことで、みなさまにお聞きしてることですが、」と枕言葉を置いてから質問します。
怖い理由⑤:社会的な事件に関わってることがある
例えば社会を揺るがす事件が起こったときです。容疑者が精神科の入院歴があると報道されることがあります。
記憶に新しいところだと、津久井やまゆり園の障害者施設殺傷事件です。彼は精神科に入院歴があります。事件や人物に関連して精神科にも恐怖を感じてしまうのは無理もありません。
ここまでのまとめ
もちろん精神科看護師になって場数を踏んでいけば、感情の振幅は小さくなっていきます。採血で針を刺すのが怖くなるプロセスと同じです。
しかし私もそうでしたけど、まだ精神科で働いたことがなければ、患者さんの行動が予測できず「精神科は怖い」という感情を抱くのはとても自然です。
というわけで、無理せずいきましょうね。
2. 精神科が怖いと感じたときの解消方法3つ【看護師の感情を深掘りしていく】

精神科看護師になったときを想定して、3つ解消方法をご紹介します。
- 親しい人に相談
- チーム医療
- 感情の観察
解消法①:親しい人に相談

悩んだときはとりあえず一人で抱え込まないことですよね。両親、友人、同期、先輩後輩、SNS上の知り合い、信頼できる人なら誰でもOKだと思います。
例えば私も新卒のときは精神保健福祉士の同期の男とラーメンを食べながらよく話をしてました。
もちろん他人に相談するのが苦手な人もいると思います。私もそういうタイプなのでよくわかりますが、そういうときは逆に「困っている人の相談に乗る」といいかもです。するとなぜか自分も相談できるようになります。
解消法②:チーム医療

自分が怖いと思っているときは、たいてい他のスタッフも怖がっています。
例えば私の職場にはある精神科医がいて、その男性医師は患者さんと家族に病名の告知をするとき必ず看護師を同席させていました。医師は何か指示を出すわけでもないので、看護師はただ立っているだけです。
いま振り返ると、そういうことです。
精神科医療もチームプレイ。治療だけでなく不安な感情も連携して解消ですね。
解消法③:感情の観察

学生時代にやったプロセスレコードとほぼ同じです。「怖い」という感情が湧き上がったら、自問自答します。
質問をどんどん掘り下げていくと、問題の本質がわかって気持ちがスッと落ち着きます。
怖い感情を掘り下げていく事例
- 〇〇さん、ヤバかったな…
- あれ今なんでヤバいと思ったんだろう…
- あぁハンドソープ一気飲みしたからか…
- でも「飲まないと命を奪うって悪魔に言われた」って話してたな
- 自分ももし同じ立場だったら、やっぱ命を奪われたくないか…
- って考えるとハンドソープを飲んでしまう気持ちは分からなくもないか…
こうして掘り下げていくと、「命を奪われたくなかった」という患者さんの心情が少し汲み取れますね。
というわけで、怖いという感情の解消策として「相談」「チーム医療」「感情の観察」の3つをご紹介しました。
3. 精神科が怖いときは病棟看護師にこだわらなくても大丈夫ですよ

結論から言うと、精神科は病院以外にも働き方はあります。
- 精神科訪問看護
- 精神科クリニック
- 精神科デイケア
「在宅で生活している」、「通院している」、「デイケアを利用している」方々は、比較的に病状が安定しているので、あなたが怖いと感じる機会は少ないと思います。
ちなみに私も精神科クリニックで働いた経験あります。
「転職したばかりでいま大変なんですよ〜」と話している通院者の姿は自分となんら変わりありませんでした。
精神科訪問看護は怖い?
もちろん訪看は基本的に一人で訪問するので、怖いと感じるかもしれません。
しかしその怖さと向かった先に、訪問看護ならではの一人一人じっくり時間をかけて関われる「やりがい」や「喜び」があります。
私の先輩は急性期病棟と訪問看護を掛け持ちしていましたが、「訪問看護の方が自分に合ってる!!」という理由で訪問看護師へ転職しました。看護師が輝ける場所は病棟だけじゃないってことですね。
怖くても病院で働いてみたいときは?
やっぱり病棟への憧れが捨てきれないこともあるかと思います。そんなときは「急性期病棟」と「慢性期病院」のどちらが自分に合ってるかチェックしましょう。
慢性期向き | 急性期向き |
---|---|
怖い思いはできるだけしたくない | 怖い感情を乗り越えたい |
残業したくない | バリバリ働きたい |
マイペースに働きたい | 救急対応をしてみたい |
身体ケアはあまりしたくない | 身体ケアスキルも習得したい |
患者さんとゆっくり話したい | 最先端の精神科医療を学びたい |
レクやイベントを楽しみたい | 難しい精神症状の回復を見たい |
単調な毎日の方が好き | 退屈は嫌い |
向き不向きは真逆なの注意してくださいね。怖いと感じる機会が少ないのは慢性期です。逆に救急医療にスリルを味わえるのは急性期です。
私は急性期病棟で選びました。暴力を受けて1か月入院しましたが、まぁこれも一つの経験ですね。
というわけで、「精神科」と一言で言っても真逆の特徴をもった職場があります。精神科は興味さえあれば、どんな看護師でも働けます。怖い感情は無理に克服する必要はありません。ぜひあなたも自分のタイプに合った職場を選んでくださいね。
というわけで、今回はこれで以上です。
お読みいただきありがとうございました(ペコリ😌)